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2021年4月22日
2017年11月に自民党の議員が中心になって「医師養成の過程から医師偏在是正を求める議員連盟」が結成されて積極的な意見交換などがなされてきた模様ですが、2020年12月9日付けで厚労大臣、文部科学大臣、総務大臣宛に「地域医療の安定のための医師養成制度改革」に関する要望が提出され、厚生労働省の医道審議会臨床研修部会でも検討が始まっていると聞き及んでおります。
要望の趣旨は以下の5つです。
1.医学部における臨床実習前の共用試験を公的なものにしてstudent doctorの法制化を行うこと。
2.医師国家試験の抜本的な見直し。
3.前記1、2がなされ臨床研修1年目終了時の研修医が、充分に地域医療に貢献できる臨床能力を習得していることを前提に、研修 2年目における地域医療研修の期間を半年間義務化すること。
4.地域のニーズ、教育研修体制に関する調査を元に地域医療研修の在り方を検討すること。
5.働き方改革、地域医療構想、臨床研修、専門研修、およびその後の医師養成課程全体を通して検討及び実施した際に、真に実効性のある偏在対策となるよう行う。
とのことであります。
この要望の主眼は、3の「地域医療研修期間を6ヶ月義務化によって地域に医師を十分供給できるようにすること」であるのは明らかです。1、2はその前段階、つまり卒後2年目の医師が地域で診療ができるように卒前研修を充実させるための施策です。具体的には医学部5,6年目の学生は診療チームに組み込まれ、実践的な研修を行えるようにするのですが、その際、学生が診療に当たることの社会的な同意を得るために、4年終了段階での「共用試験」を新設すること。そして医師国家試験の抜本的(実践的)な見直しを提案しています。4、5は現行の制度・地域の実情などと整合性・調和を図る観点から設けられたものと解釈できます。
ところで、要望の主眼の「地域医療研修期間を6ヶ月義務化によって地域に医師を十分供給できるようにすること」という構想を最初に発したのは小職と思われます。遡ること2012年になりますが、2月に北海道医療対策協議会(会長;高橋はるみ北海道知事)が中村裕之衆議院議員介添の元、厚生労働大臣に「医師確保のための提言」を提出・陳情いたしました際、「その2.臨床研修制度見直し;(1)医師不足地域における研修の充実」で述べられております。
提言のこの部分は、同年1月に行われた北海道医師会の救急医療対策部会で小樽後志地区代議員の阿久津先生(小樽医師会長)から提案していただいたものですが、発言が終了するや会議場は満場大賛成というかつてない熱気で盛り上がったと聞いています。その原案・原稿は余市医師会に所属する小職が作成し、地区の代議員である阿久津先生に託したものです。北海道医師会機関誌「北海道医報」1125(同年6月)号に掲載されておりますのでご参照いただければ幸いです。
つまり私は表記要望の主眼部の「言い出しっぺ」ですので、このたび当該議員連盟から提出された要望には大賛成であり、ここまで具体化を進めていただいたことに深い感謝と敬意を表するとともに、実現に向けて着実に議論を積み重ねていただきたいと強く願っております。
令和3年4月
理事長 吉田秀明
(参考)平成23年度北海道医師会救急医療対策部会全体会議への意見
(参考)「地域医療」の研修期間延長を?地域医療再生の切り札?(北海道医報第1125号掲載)
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